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https://www.mri.co.jp/knowledge/mreview/202206-1.html
桒原響子 (日本国際問題研究所研究員)
2022年4月5日 WEDGE Infinity
国際世論の「心を勝ち取る(winning hearts and minds)」。いま、世界でこの能力に最も長けているのは、ウクライナのゼレンスキー大統領である。
ゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナ侵略の中にあって、各国からのウクライナ支持・支援を勝ち取るため、欧米諸国の議会において積極的に演説を行ってきた。英国、カナダ、ドイツ、米国、イスラエル、イタリアなどに続き、2022年3月23日の午後6時(日本時間)には、日本の国会でもオンライン演説を行った。
近年、国家にとって、自らの外交政策を有利に進め上で重要となっているのが、自国世論のみならず、交渉相手国や世界の一般世論を味方につけることであり、そこで重要なのが、パブリック・ディプロマシーという外交手段である。
パブリック・ディプロマシーとは、一般に、「外交政策の立案・実施にあたっての国民の態度に影響を与えるものであり、伝統的な外交の枠を超え、他国での世論形成や各国間のグループでの交流、外交問題の報道、政策形成やコミュニケーションなど幅広い分野にまたがるもの」とされる。
ゼレンスキー大統領は、ロシアのウクライナ侵略を受け、世界の世論を味方につけるため極めて効果的なパブリック・ディプロマシーを展開しており、大きな成功を収めている。本稿では、ゼレンスキー大統領のパブリック・ディプロマシーの実態を詳しくていくことにしたい。
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2019/html/nc007000.html
いわゆる「グレーゾーンの事態」とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものです。
例えば、国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題に関わる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況をいいます。
いわゆる「ハイブリッド戦」は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。
顕在化する国家間の競争の一環として、「ハイブリッド戦」を含む多様な手段により、グレーゾーン事態が長期にわたり継続する傾向にあります。
2022/03/19 05:00 読売新聞オンライン
情報戦は、国内外の世論を誘導したり、相手国を混乱させたりするために、交戦国同士が仕掛けるものだ。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻では、市民やハッカー集団もサイバー空間での情報戦に加わり、統制がとれない「サイバーカオス」の状態が生まれている。
ロシアは2014年、ウクライナ南部のクリミア半島に侵攻した際に、重要インフラをサイバー攻撃でマヒさせたうえで、偽情報を流して社会を混乱させ、最小限の軍事力で併合を実現した。この成功体験があっただけに、プーチン大統領にとって、今回の事態は誤算だっただろう。
侵攻にあたりロシアは当初、「民間施設は標的にしていない」と主張した。しかし、集合住宅などが攻撃される多数の映像が世界中に流れ、瞬く間にうそは暴かれた。14年に比べてSNSが普及し、市民が撮影した現地の生々しい動画が拡散されるようになったためだ。
偽情報が拡散する時代の基本原則
https://www.mri.co.jp/knowledge/mreview/202206-1.html
国際世論の心に響くゼレンスキー大統領の戦略的発信
桒原響子 (日本国際問題研究所研究員)
2022年4月5日 WEDGE Infinity
国際世論の「心を勝ち取る(winning hearts and minds)」。いま、世界でこの能力に最も長けているのは、ウクライナのゼレンスキー大統領である。
ゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナ侵略の中にあって、各国からのウクライナ支持・支援を勝ち取るため、欧米諸国の議会において積極的に演説を行ってきた。英国、カナダ、ドイツ、米国、イスラエル、イタリアなどに続き、2022年3月23日の午後6時(日本時間)には、日本の国会でもオンライン演説を行った。
近年、国家にとって、自らの外交政策を有利に進め上で重要となっているのが、自国世論のみならず、交渉相手国や世界の一般世論を味方につけることであり、そこで重要なのが、パブリック・ディプロマシーという外交手段である。
パブリック・ディプロマシーとは、一般に、「外交政策の立案・実施にあたっての国民の態度に影響を与えるものであり、伝統的な外交の枠を超え、他国での世論形成や各国間のグループでの交流、外交問題の報道、政策形成やコミュニケーションなど幅広い分野にまたがるもの」とされる。
ゼレンスキー大統領は、ロシアのウクライナ侵略を受け、世界の世論を味方につけるため極めて効果的なパブリック・ディプロマシーを展開しており、大きな成功を収めている。本稿では、ゼレンスキー大統領のパブリック・ディプロマシーの実態を詳しくていくことにしたい。
<解説>「グレーゾーンの事態」と「ハイブリッド戦」- 令和元年度版防衛白書
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2019/html/nc007000.html
いわゆる「グレーゾーンの事態」とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものです。
例えば、国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題に関わる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況をいいます。
いわゆる「ハイブリッド戦」は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。
顕在化する国家間の競争の一環として、「ハイブリッド戦」を含む多様な手段により、グレーゾーン事態が長期にわたり継続する傾向にあります。
情報戦「サイバーカオス」状態…慶応大教授 土屋大洋氏[視点 ウクライナ危機]
2022/03/19 05:00 読売新聞オンライン
瞬く間に暴かれたうそ
情報戦は、国内外の世論を誘導したり、相手国を混乱させたりするために、交戦国同士が仕掛けるものだ。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻では、市民やハッカー集団もサイバー空間での情報戦に加わり、統制がとれない「サイバーカオス」の状態が生まれている。
ロシアは2014年、ウクライナ南部のクリミア半島に侵攻した際に、重要インフラをサイバー攻撃でマヒさせたうえで、偽情報を流して社会を混乱させ、最小限の軍事力で併合を実現した。この成功体験があっただけに、プーチン大統領にとって、今回の事態は誤算だっただろう。
侵攻にあたりロシアは当初、「民間施設は標的にしていない」と主張した。しかし、集合住宅などが攻撃される多数の映像が世界中に流れ、瞬く間にうそは暴かれた。14年に比べてSNSが普及し、市民が撮影した現地の生々しい動画が拡散されるようになったためだ。